当用漢字と常用漢字は、同じものではない

「当用漢字」と「常用漢字」は、どちらも社会で使う漢字の基準として語られますが、成立した時代と考え方が異なります。現在使われているのは常用漢字表であり、一般の社会生活における漢字使用の「目安」と位置付けられています。現在の常用漢字表そのものについては、常用漢字とは何かでも詳しく解説しています。

1946年の当用漢字表は、戦後の国語改革の中で生まれた

戦後間もない1946年、内閣告示として当用漢字表が示されました。当時は、法令・公用文書・新聞・雑誌などで用いる漢字の範囲を整理し、読み書きの負担を軽くすることが大きな課題でした。「当用」という名称には、当面使用する漢字を定めるという時代背景が表れています。

その後、音訓や字体、送り仮名などについても関連する施策が整えられ、学校教育や出版物の表記に大きな影響を与えました。ただし、国語の実際の使われ方は社会の変化とともに動きます。固定した枠だけでは扱いにくい語や固有名詞もあり、より柔軟な考え方が求められるようになりました。

1981年、常用漢字表へ切り替わった

1981年に常用漢字表が告示され、当用漢字表に代わりました。重要なのは、常用漢字表が「これ以外の漢字を使ってはいけない」という禁止表ではないことです。社会生活で現代の国語を書き表す際の目安として、読み手と書き手の双方にとって分かりやすい表記を考えるための基準になりました。

2010年の改定で2,136字になった

情報機器の普及によって、以前なら手書きが難しかった漢字でも日常的に入力できるようになりました。固有名詞や社会で目にする文字の実態も踏まえ、2010年の改定では常用漢字が2,136字に増えました。「誰でも手で書きやすい字だけ」という発想ではなく、読む場面まで含めた現代の文字生活に対応した改定と見ることができます。

漢字表は、言葉を閉じ込める箱ではない

常用漢字表を理解するときは、「表内か表外か」だけで文章の良し悪しを決めないことが大切です。専門用語、歴史用語、文学作品、人名・地名には表外漢字も現れます。大切なのは、相手や媒体に応じて読みやすさを考えることです。必要なら振り仮名や言い換えを添えるという選択肢もあります。

参考:文化庁「常用漢字表」「表外漢字字体表」等の国語施策資料。常用漢字表は一般の社会生活における漢字使用の目安として示されています。